火災通報装置は、火災が発生した際に迅速な通報をし、被害の拡大を防ぐ役割を担っています。
建物に設置される火災通報装置は、従来の固定電話回線を利用して消防機関へ連絡するのが一般的でした。
しかし、NTTをはじめとする通信事業者の電話回線サービスが順次終了する中、火災通報装置のIP回線化への移行は避けられない課題となっています。
本記事では、火災通報装置のIP回線化に伴う対応方法や確認手順などを解説します。
火災が発生した際、迅速に消防機関へ連絡するために設置されるのが火災通報装置です。
従来は固定電話を利用した通報が一般的でしたが、近年はNTTなどの通信事業者がアナログやISDNの電話回線を順次終了し、IP網への移行を進めています。
ここでは、火災通報装置におけるIP回線とは何かをはじめ、火災通報装置でIP回線を使用するメリット・デメリットについて解説します。
IP回線とは、従来の回線交換方式のように音声をそのまま伝送するのではなく、音声やデータを小さなパケットに分割し、インターネットと同様の仕組みで送受信する接続方式です。
このため、通話やデータ通信はすべてデジタル化され、通信網を効率的に利用できるという特徴があります。
ただし、パケット通信である以上、安定したネットワーク環境と電源供給がなければ利用できない点に注意が必要です。
火災通報装置においても、このIP回線を用いることで通報情報がパケットとして送信され、消防機関の受信システムに届く仕組みとなっています。
火災通報装置を運用する際、従来の固定電話と比べてIP回線には明確な違いがあります。
従来の固定電話は停電時でも一定の時間は通話が可能でした。しかし、IP回線は電源供給が途絶えると利用できなくなるため、火災発生時に停電が同時に起きると通報が行えない恐れがあるのがデメリットです。
そのため、UPS(無停電電源装置)の設置といった追加対策が必要です。
一方で、火災通報装置にIP回線を導入することで得られるメリットもあります。
IP回線は、時間の遅延が少なく消防機関への通報を迅速に行えるほか、固定回線に比べて通信コストが安いのも特徴です。
さらに、障害発生時の切り替えや保守がスムーズになり、設備管理の効率化も期待できます。
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火災通報装置の使い方を分かりやすく解説!気を付けたい注意点も紹介
火災通報装置のIP回線移行を行う際は、まず現在の設備や契約状況を正しく把握することが重要です。
ここでは、確認の手順と、移行前に必ず押さえておきたいポイントを解説します。
火災通報装置の回線をIP回線に移行させる前に、以下の内容を確認しましょう。
各手順について、簡単に説明します。
現状の回線種類を調べる
建物で利用している回線がアナログなのか、ISDNなのか、それともすでにIP回線に切り替わっているのかを確認します。
特にNTTの発行する契約書や利用明細に記載されている電話番号やサービス名称が参考になります。
火災通報装置の機種を確認する
火災通報装置の機種を確認します。通報装置がIP回線に対応しているかどうかは、メーカーの取扱説明書や仕様書で確認可能です。
古い装置の場合、IP回線では動作しないケースもあるため注意が必要です。
消防機関との接続テストを実施
実際にIP回線へ切り替えた場合、消防への通報が問題なく行えるかを試験しましょう。消防機関や保守会社と連携し、一定の時間を確保して火災通報装置の作動確認を行うことが大切です。
火災通報装置をIP回線へ移行後、建物の防災設備として確実に機能させるためには、いくつかの注意点があります。
具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。
各ポイントについて、簡単に説明します。
火災通報装置は、消防機関へ通報した後に折り返し信号(逆信)を受信することで、通報が確実に完了したかを確認します。
しかし、NTT東日本・西日本が提供する固定電話サービスがIP網へ移行する過程で、一部の火災通報装置において逆信が正常に受けられない事象が判明しています。
これは、IP回線特有の通信仕様や接続条件の影響によって発生するもので、実際には通報できていても装置が「通報失敗」と誤認してしまうケースがあるからです。
そのため、建物管理者は施設の装置が対象となるかを確認し、必要に応じて消防機関やNTTと連携しながら早急に対応を検討することが重要です。
参考:総務省消防庁|NTT固定電話のIP網移行に伴って火災通報装置に発生する事象への対応について
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火災通報装置で逆信できない4つの理由!すぐ確認すべきポイントとは?
IP回線は、従来のアナログ電話回線と異なり、電源の供給がなければ利用できません。
そのため、火災発生時に停電が同時に起こると、消防機関への通報ができなくなる恐れがあります。
こうしたリスクを避けるには、UPS(無停電電源装置)や専用バッテリーを設置し、一定時間は通報機能を維持できるようにすることが求められるのです。
また、UPSの容量や稼働時間は建物の規模や設備の種類によって適切に選定する必要があります。
火災通報装置をIP回線に移行した後は、定期的な接続試験を実施します。
外観点検や機能点検の際に、実際に通報操作を行い、消防機関へ信号が確実に届くか、逆信が正常に返ってくるかを確認しましょう。
この点検によって、日常的には気づかない通信不具合や誤作動を早期に発見でき、緊急時の通報失敗を防ぐことができます。
点検の結果を記録し、改善が必要な場合は早急に対応することで、建物全体の防災体制を継続的に強化できます。
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火災通報装置のIP回線化について解説しました。
火災通報装置をIP回線化する際には、建物の設備や現在の契約状況をしっかり確認した上で、消防機関との接続テストやバックアップ電源の準備を行うことが重要です。
火災通報装置の定期的な点検や自動火災報知設備との連動確認などを行い、確実な通報体制を維持しましょう。
東報防災工業株式会社では、火災報知設備や防排煙設備、消火器など、多様な防災機器を取り扱っております。施設の防災対策において、最適な設備選定や設置のご提案も行っております。
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