マンションにおける火災対策は、住民の安全を守る上で欠かせません。火災の初期段階での消火をスムーズに行うためには、適切な消火設備の設置が必要です。
しかし、消火設備の設置基準や種類などへの理解が不十分だと、いざという時に適切に対応できない可能性もあります。
本記事では、マンションで設置が必要な消火設備の種類や各設備の特徴について解説します。
マンションは多くの人が生活を営む共同住宅であり、火災が発生した場合には迅速な初期消火や避難などが重要です。
本章では、マンションに設置される主な消火設備の種類と特徴について詳しく解説します。
マンションに必要なのは、以下のような種類の消火設備です。
消火器
屋内消火栓
スプリンクラー
各消火設備の特徴について詳しく解説します。
消火器は、火災の初期段階で手軽に使用できる重要な設備です。火災が拡大する前の初期消火の際に役立ちます。
マンションでは廊下やエントランスなどの共用部分に設置されることが一般的です。
消防法に基づき、マンションの適切な場所に設置が義務付けられており、使用方法は簡便で誰でも扱えます。
また、消火器にはさまざまな種類があり、マンションの設備や火災の種類に応じて選定されます。
▼消火器の種類
マンションに設置されている消火器には、いくつかの種類があります。それぞれの消火器を、種類ごとに簡単に説明します。
・粉末式消火器
粉末消火剤を使用し、燃焼を迅速に抑える設備です。木材や紙などの一般火災はもちろん、油火災や電気火災にも対応可能な万能タイプとして、マンションの屋内外で広く使用されています。
低コストで設置が容易で手軽に扱えるのも特徴です。
・ハロゲン化物消火器
ハロゲン化物消火器は、ハロゲン化物ガスを用いて火災の酸素供給を遮断し、瞬時に消火します。電子機器や精密機械のある、サーバールームや制御室などに設置されていることが多いです。
ガスを利用する構造上、操作時に周囲への残留物が少なく、避難後も設備の損傷を最小限に抑えます。
・泡消火器
泡を発生させて火災の燃焼面を覆い、酸素を遮断して鎮火する仕組みを持つ消火器です。特に油火災への効果が高く、マンションの駐車場などに適しています。
水槽を併用する構造の場合もあり、泡が燃料流出を防ぐ役割も果たします。泡の特性上、広範囲に対応可能であり、安全性を確保するための重要な設備です。
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消火栓設備は、マンション内で火災が発生した際に消火水を供給するための重要な設備です。消火栓設備には、屋内消火栓と屋外消火栓があります。
水槽を水源とし、消火ホースを使用して火元に直接水を噴射する仕組みです。
特に大規模なマンションや構造上リスクの高いエリアに設置されることが多く、消防法により規模や階数に応じた設置が義務付けられています。
消火栓は、マンションにおける迅速な初期消火を可能にするので、火災被害の拡大を防ぐために不可欠です。
スプリンクラーは、火災を早期に感知し、自動的に水を放出して消火するシステムです。火災を感知するとスプリンクラーヘッドが作動し、火元に直接放水することで、火災の拡大を防ぎます。
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マンションでの安全な暮らしを守るためには、消火設備だけでなく、防火設備の設置も欠かせません。ここでは、マンションに設置が必要な防火設備の種類を紹介します。
マンションで設置が必要な防火設備には、以下のような種類があります。
それぞれの防火設備について簡単に解説します。
火災報知器は、火災を感知し、マンションの住人に速やかに警報を伝えるための設備です。主に煙や熱を検知する仕組みで、異常を感知すると音で火災の発生を知らせます。
これにより、初期消火や避難の判断を迅速に行うことが可能です。
消防法に基づき、マンションの各部屋に設置が義務付けられています。特に、寝室やキッチンなどへの設置が推奨されています。
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火災報知器設置は義務?罰則は?設置が必要な住宅の種類や場所を解説
自動火災報知設備は、火災発生時にいち早く煙や熱を感知し、警報を発するシステムです。感知器・受信機・発信機から構成されており、煙や熱、炎で火災を感知し、警報音を鳴らします。
自動火災報知設備は、マンションの管理室や玄関・廊下などの共用部に設置されることが多いです。
非常警報設備は、火災やその他の緊急事態においてマンションの住人に素早く警報を伝えるために用いられる設備です。
音声やサイレンによる警告を行い、適切な避難行動を促す役割を担います。
非常警報設備は、主にマンションの共用部分やエントランスなど、多くの人が利用する場所に設置されることが一般的です。
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マンションに必要な避難器具と設置義務に関する疑問を徹底解説!
マンションにおいて設置が必要な消火設備の中には、マンションの構造や設備によっては免除される種類のものもあります。
設置が免除される場合の消火設備は、以下の2つです。
設置が免除になるケースをそれぞれ解説します。
屋内消火栓はマンションに必要な消火設備のひとつですが、場合によっては設置が免除されます。
屋内消火栓の設置義務が免除されるのは、以下のいずれかにあてはまる場合です。
・二方向避難型かつ5~10階建て以下
・非二方向避難非開放型かつ10階建て以下
・11階以上で共同住宅用スプリンクラーを設置している階
屋内消火栓は、10階以下のマンションには、屋内消火栓の設置が免除されます。
また、11階以上のマンションであっても、共同住宅用スプリンクラーを設置している場合、屋内消火栓の設置が免除されます。
スプリンクラーも、場合によっては設置が免除される種類の消火設備です。
スプリンクラーの設置が免除になるのは、以下のような場合です。
・10階建て以下
・二方向避難・開放型特定共同住宅の11階以上で、内装制限などをしている※
・開放型特定共同住宅などで、11~14階で内装制限をしている※
※スプリンクラーの設置が免除される場合でも、共同住宅用火災報知設備の設置は義務です。
スプリンクラーは、10階建て以下の場合は、設置が免除されます。
また、11階以上であっても、燃えにくい材料を使用するなどの内装制限を行い、かつ共同住宅用の火災報知設備を設置していれば、スプリンクラーは設置しなくてもいいとされています。
マンションにおける消火設備は、マンションの住民の命と財産を守るために欠かせない存在です。消防法に基づき、建物の規模や構造に応じた適切な設備の設置が義務付けられています。
消火器やスプリンクラー、消火栓といった設備は、それぞれ異なる役割と効果を持ち、火災の種類や発生場所に応じた対策が可能です。
消火設備の適切な設置と日々の管理が、マンション全体の安全を守るための鍵となります。
東報防災工業株式会社では、火災報知設備や防排煙設備、消火器など、多様な防災機器を取り扱っております。施設の防災対策において、最適な設備選定や設置のご提案も行っております。
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